以前にも少し書きましたが、僕は物事の基礎、というか「なぜこうなるのか?」ということを自分自身が理解できないとなかなか前に進めないタイプの人間です。
”取扱説明書”は小さなころから必ず読んでいました的な。
大学院で分析の手法として、統計学や計量経済学と呼ばれる(僕にとっては非常に)高度な数学の知識が要求されるものを学ぶにあたっては、数学が苦手な僕は中学数学から復習をしました。
数学が苦手になった理由も、ほとんど言い訳に近いですが、「なぜこうなるのか?」を理解できないところが始まりでした。
例えば”自然数”は通常”n”と表記されますが、おそらく中学の時に教員からそのように指導されたと思います。
しかし、その説明には「なぜ”n”であるのか?」という理由がなく、「とりあえず”n”とします」とか、そんな感じだったはずです。
”n”というのは”Natural Number”と文字通りの意味の略なのですが、中学の時はそれが分からずに、「なぜ”a”ではいけないのだろう?」と思っていました。
このような簡単な例ならまだしも、高校数学、特に微分・積分の単元などでは、証明の難しさから「なぜこうなるのか?」を置いておいて、「とりあえずこうなる」というのを覚えさせられることがあります。
しかし、それでは上手く消化することのできない僕は、そのようなケースが増えるにつれて数学に苦手意識を感じるようになっていきました。
ということで今回は、「なぜこうなるのか?」を理解するための一冊を紹介します。
深川和久『ゼロからわかる微分・積分』ベレ出版、2006年。
タイトルからしていかにもの入門書ですが、「なぜこうなるのか?」という疑問が解決できることを一番のポイントとして選びました。
その理由(微分・積分学の基本定理)については、大学で学習することとして、高校の段階では触れられません。その理由を先送りすることは仕方ないのですが、先送りしたことが名言されないままであるところに問題があるわけです。
本書中にも僕が感じたものと同じような問題点が指摘されており、文字通りゼロから微分・積分について詳細な説明がされています。
さらに、数式は必要最低限のものしか用いられておらず、微分・積分の考え方を理解することにその主眼を置いています。
今さらですが、高校で微分・積分を習得する際に本書を併せて読むことができていれば、数学に対する苦手意識も感じることがなかったかもしれません。
基礎を固めることなしに、応用問題を理解することなどできません。
統計学や計量経済学を学ぶ上で、微分・積分の概念は非常に重要です。
また、それだけでなく微分・積分は我々の日常生活の至る所で有用な概念なのです。
身近なものとして現れたものを微分を使って記述できれば、そのもとの正体を知ることができるのではないか。
実は難解な数式や関数を解く為には、必ずしも数学の教養がなくても―「なぜこうなるのか?」を理解していなくても―答えを導くことは可能です。
コンピュータや表計算・統計ソフトの発達によって、一瞬で正確な答えを得ることができるからです。
しかしながら、「なぜこうなるのか?」を理解するということは非常に重要だと思います。
物事の一部を見るのではなく、全体を眺めることでそれをより良くする方法を発見するといった話はよくあることです。
例えば、分業して何かを生産しているとして、一度俯瞰で見ることによって全体の流れの非効率を発見し、それを改善することで生産の効率を高めることができる場合があります。
100ある作業の中の1つの工程しかしらずに、何かを改善することは難しいでしょう。
「なぜこうなるのか?」(全体)を理解することによって、新たな知見は生まれるのです。
微分と積分が複雑に絡み合った世界は、コンピュータの介在を超えた、尽きない世界なのです。