宅飲みは割り勘にするのが吉



経済学を少しかじっていると日常生活において役立つことがあります。


というか、経済学は効率的な資源配分の追究とその選択に関する学問ですから、経済学を学べば自分の生活を良くするヒントを掴める、というのは当たり前かもしれませんね。


さらに言えば、学問とは社会に還元する性質を持っているので、もちろん全ての学問がそうだと言われればそうなのですが、経済学は僕たちがよく遭遇するこんな場面においても役立ちます。



先日、後輩に招かれて宅飲みに参加しました。
美味しい鍋とお酒を用意してくれていて、とても楽しい会でした。

楽しい時間が過ぎるのは早く、ほとんどの後輩たちは帰宅し、遅れて参加した僕は費用を支払おうと、いくらか尋ねました。


「5000円頂いてもいいですか?」


との想定外の返答に、正直宅飲みということで甘く見積もっていたので少し驚きました。

なぜ宅飲みにしては高めの5000円だったかというと、その会の参加者は全員で7人で、その内訳が大学院生の僕(5000円)と、大学4年生の後輩が2人(3000円ずつ)、2年生が3人(1000円ずつ)、1年生が1人(無料)だったためです。

もちろん支払いましたが、僕は何とも言えない―いつもなら抱くことのない―不満足感を抱きました。


ちなみに、僕は別の後輩と(店で)飲んだ時は、10000円(会計の半分以上)を出しました。
ここで言いたいのは、僕の選好として、僕が極度の”ケチ”ではないということです。


ここまでが前提条件になります。


以上の状況から全員の幸福度をより高めるためにはどうすればいいのでしょうか。
(=または、なぜ僕はいつもなら抱くことのない不満足感を抱いたのでしょうか。)


この問題に対し、経済学は重要な示唆を与えてくれます。

行動経済学になりますが、「プロスペクト理論」によると、損失は同じ額の利得と比べるとその絶対値は2倍から2.5倍も大きいとされています。


つまり、それを2倍と仮定して単純に計算しても、
|-(5000×2)|>|+(3000×2)+(1000×3)+(0)| なのでマイナスの方が1000大きくなってしまいます。


これは何を示すかというと、僕が支払った5000円分の不幸度と後輩たちの総額の幸福度では、不幸度の方が大きい、つまり非効率的な配分であると言えます。


もしこれを、僕の5000円の支払いを4500円にして、残りの500円を1年生の後輩に支払ってもらうとすると、
|-(4500×2)|<|+(3000×2)+(1000×3)+(500)| プラスの方が500大きいですね。


つまり幸福度の方が高い、効率的な配分であると言えます。



経済学においては以上のような答えが導き出されますが、宅飲みという特殊な状況を考えた場合、仮に、全員が等しく支払う―割り勘する―と、一人当たり2000円になります。
これは全員にとって宅飲みの許容範囲額ではないでしょうか。

特殊性を考慮すると、このような配慮が必要な場合もあります。


また、前回の投稿で取り上げた「内発的動機づけ」にも関わる問題であると言えます。
外からの強制は「内発的動機づけ」を低下させるので、先輩として多めに支払う”不完全義務”を負っている僕に対して、予め決まった支払い額を提示するよりは、総額でいくらだったかを伝えた方が良かったかもしれません。


それ以外にも、例えばその日は宅飲みの前に用事があって食事を済ませていたので、あまり鍋もお酒も消費しなかった。買い出しに参加できなかったので、完全に受動的な支払い状況になっていた。
など、考えられる点は実際は多々あるのですが…

とは言え、経済学が出した答えから我々が学ぶことは多いと思います。
何となくですが、5000円なら高いけど4500円とか4000円ならいいような気もする、と言われたら納得できませんか?



ここから導き出される教訓は、

①宅飲みという特殊な状況(通常は費用が抑えられる)において、何人かが高額な支払いをするのは得策ではない=宅飲みは割り勘が吉。
もし、何人かが高額な支払いをする場合は、効率性が達成されているかに留意する。

②先輩や上司などの「内発的動機づけ」を低下させないように上手く支払わせる。


と、経済学(と心理学)を学ぶとこのような面白い(ケツの穴の小さい)考察ができます。
しかし、ありふれた日常のヒトコマをいちいちこうやって考察してしまうのは、大学院生の悲しい性ですかね…


このように書きましたが、実際はできれば全額支払ってあげたいぐらいかわいい後輩で、わざわざ宅飲みに誘ってくれたり、鍋を取り分けてくれたり、彼らの優しさに対して僕の支払いは本当は”完全義務”でありたいのですが…

今回は経済学の面白さを表す一例に取り上げさせてもらいました、悪しからず。

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